君が良いと言っていたあの映画を見た。大半の記憶は無い。どうやった、と嬉しそうな何か期待した目で君が俺を見つめるので、おもしろかったよ最初のワンシーン、と冗談めいて答えた。君が笑うと黒くてつやの無いその髪がゆれるゆれる、色んなものに邪魔をされて見えなくなっても、だから本当に君が好きなのだとその髪のおかげで言いきれるのだ、逃げ場は無い。髪を切ってみたら、と空気に溶けるほどの小さな声で言うと、いやや短いの落ち着かん、と君は守るように後ろ髪をすっと握った。
 もうそろそろ愛想つかせてもいいよ俺に。そう言うと君は今度は髪をゆらさずに笑う、また難しいこと言わんといて、微笑んだ。手を握った、握り返された、世界の中心はきっと俺の目の中にある。どこでも叫べるものか、誰に聞こえなくても良い。髪を切っても嫌いになんてならないし、明日君が俺の元から離れても、俺はずっと君のフルネームも星座も、黒い髪も忘れたりしない、たぶん。踏みつけられた花くらいむなしくて愚か、それ程きれいで居たい俺は、上手く生きて行く術を知らない。


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2005.11.21. ぬこ

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